-----------------------------------------------------------「From jealousy
 

 

 

「・・・マスター・・・さん。」
切れ切れの息の中、君はまだ俺をそう呼ぶ。
「義人、だろ?」
名前で呼んで欲しい。
願いを込めて耳元でそう囁くと、君は甘い吐息を洩らして擽ったそうに身体を反らす。
伸びた首筋に口付け、焦らすように蜜の溢れる場所に触れると、薄く洩れていた君の声は更に震えた。
何かを訴えるような君の眼差し。
「・・・いぢわる。」
意地悪はどっちだと、俺は苦笑する。
君とこうなってからもう半年も経つっていうのに、俺をちゃんと呼んでくれない君の方が意地悪だ。

俺は10年来付き合いの有るバカに連れられて、一度だけ店に来た君に一目惚れをした。
君をヤツの特別だと思っていた俺は、それとなく探りを入れてみた。
「ただの生徒だ。」
素っ気無いヤツの答え。
「ふーん。じゃ、俺がもらおっかな。」
「ご自由に。・・・但し!卒業してからにしてくれ。」
本人の意思も確認しないで、貰うだのご自由にだのとやり取りをして、君が聞いたら怒るかもしれないな。
晴れて担任教師からも許可を得ると、ヤツに彼女の携帯の番号を聞き出して、卒業式後の日曜日に会う約束をした。

それから何度かデートを繰り返して、晴れて君は俺のものになった訳だけど。
君が未だに俺を『マスターさん』と呼ぶのは、君が零一を好きだからなんじゃないかと疑っちまう。

いつか・・・アイツに奪われるんじゃないかと、俺はいつも怯えてる。
君と一緒に過ごしていても、こうして君を抱いていても。

「俺の事、好き?」
君の身体への口付けを止めて、君を強く抱きしめ問い掛ける。
「マスタ・・・。」
「名前で呼べよ!」
腕の中の君の身体が強張る。
「・・・どうしたんですか?」
恐る恐る君が顔を上げて、声を荒げる俺を不安げに見つめている。
「ゴメン。俺、焦ってるみたいだ。
 君が・・・アイツの、零一のトコ行っちゃうんじゃないかって。」
君は少し驚いて、そして溜息混じりに微笑う。
そしてそっと、俺の頬に手を添える。
「・・・よ、ヨシヒト・・・くん。」
どもりながら小さく俺の名前を呼ぶと、軽く君の唇が触れる。
「好きだよ。・・・私、あなたしか見えてない。」
「・・・冴。」
頬に添えられた小さな掌を握り締めると、そっと手の甲へキスをする。
それだけで、君は甘い声を洩らす。
「俺も、君が好きだよ。」
耳元で囁くついでに軽く息を吹きかけ耳たぶを舌で弄ぶと、背中に絡んだ君の腕がきつくなる。
「・・・あ・・・んっっ・・・。」
指先で君の背中を下り、腰の辺りに円を描くとアッサリ君の力が緩む。
唇を首筋に移しゆっくり啄ばみながら下ると、胸の先端が固く尖っているのが見えた。
飢えた獣のように音を立ててむしゃぶりつくと、君がうわ言のように俺の名前を口にする。

・・・俺は、何をこんなにムキになってんだ?
まるで、ガキだ。
青春真っ盛りじゃねーか。

綺麗に、スマートに。
俺の恋愛のルールは、あっさり君に崩されちまう。
つまらない嫉妬をして、みっともなく身体を貪って。
カッコ悪いな、俺。
でも・・・こんなのも悪くない。

俺を感じてくれてる証が、脚の間に割って入った俺の太腿を濡らす。
太腿の代わりに指を当てると、君は可愛い声を上げて悦ぶ。

―もっと鳴いて。俺の全てで。

耳元でそう囁いて君の脚を更に開くと、淫らに咲いた花に軽くキスをする。
君は脚を閉じて逃げようとした。
「・・・イヤ?」
君は肩で息をしながら、首を横に大きく振る。
「じゃあ、させて。」
俺の問い掛けに、今度は首を縦に振る。
軽く充血しだした花芯を舌で執拗に擽ると、色っぽく君の腰がくねる。
「もっと?」
君は手で顔を隠すと、イヤイヤをする。
「・・・ヤダ。」
可愛い君の仕草に、嗜虐心が目を覚ます。
「じゃ、止めちゃお。」
「・・・いぢわる。」
俺は蜜の溢れ出る場所から唇を離して軽く笑うと、代わりに俺自身を捧げた。

君はきつく目を閉じ眉間に深い皺を寄せて、耳まで紅く染めて俺を感じてくれる。
時々薄く目を開いて、俺を確かめて。
「・・・んっ・・・何か。いつもとっ・・違うよぅ。」
唇を震わせながら、君は目の端で涙を浮かべる。

・・・君が、俺の名前を呼んでくれたから。
だから、いつもと違うんだよ。
君の言葉で俺はいつも以上に、曇りなく君を愛せたから。
だから君も・・・。

震える君の唇から、悲鳴が上がる。
それにあわせて、俺も君の最奥を貪る。
涙を沢山流してる君の喘ぎは、もう嗚咽に近い。

君が俺を締め上げているのが緩むのを感じると、俺は君の中で果てた。

うたた寝をしている君に腕枕をして煙草をふかす。
頬にかかる髪を除けてやると、ぱっと君の目が開く。
「・・・ごめんね。」
「何が?」
掠れた声で謝る君の髪を撫でながら、謝罪の意味を尋ねる。
「今まで名前で呼ばなくって、ごめんねっ。だって・・・。」
「だって?」
「マスターさん・・・叔父さんと同じ名前なんだもん。恥ずかしくって。」
俺は・・・何を勘ぐってたんだか。
「あ、また『マスターさん』って呼んだな?」
ふざけて睨みつけると、君はペロッと舌を出す。
「ごめんよっ、ヨッシー。」
「ヨッシーって、お前なぁ。」
・・・俺は某ゲームの恐竜か?
煙草を消すと、逃げようとする君を捕まえる。
「好きだよ、義人くん。・・・・・・って、ヤッパリ照れる。」
「慣れろ。・・・一生『マスターさん』じゃ悲しいな、俺。」
俺の言葉に、君は一瞬硬直する。
「・・・一生?」
俺の胸元に顔を埋めて、君は小さく呟いた。
「違うの?」
君は黙って首を横に振る。
「・・・一生ヨッシーって呼んでやる。」
生意気な唇に、俺は軽くキスをした。

・・・『マスターさん』は悲しいけど、『ヨッシー』は嫌だな、俺。

fin.

 

 

 

 

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